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Vol.1 高橋尚子さん


1980年 文理学部 数理学科卒業
國學院大學経済学部教授 /ナウハウス(有)代表取締役

「男だったら偉くなれるんですか?」

富士通(株)の女性SE第一期生として採用された高橋さんは、当時の男性上司に「君が男だったらなぁ・・」と、よく言われていた。そんな時は「じゃあ、男だったら偉くなれるんですか?」と切り返していたという。4年半後、高橋さんは安定した大企業を退職し、当時の最先端ベンチャー企業であった(株)アスキーに入社する。


「親はもちろん大反対。でも、当時の富士通にそのままいても出世ができないと思った。早く偉くなりたかった。自分の権限を持って、好きな仕事を自由にやりたかった。」

アスキーは、大企業でビジネスマナーを身に着けた初めての技術系女性社員として高橋さんを採用し、パソコン・スクール講師や新入社員教育の担当などに活用。高橋さんも自分だけが持つスキルを活かすことができ、仕事を思い切り楽しんでいた。そして、29歳で同僚と結婚、大学時代の友人達の中では一番遅い結婚だった。それを機にアスキーから取引先の会社へと移り、教育(OAインストラクタ)と書籍関連の仕事に従事している頃、バブルが到来。知人から女性だけの会社を立ち上げないか?と誘われ独立、会社経営に乗り出す。バブルの崩壊を経て、最終的には自分ひとりで会社を立ち上げ、コンピュータのマニュアル作成を中心とした業務を請け負う会社をスタート。この時、高橋さんは35歳。


「そろそろ子どもを作ろうか?と思う時期なのに、きた仕事の納期を守るために徹夜で仕事をしたりしていた。お金の支払もきっちりしたいから、無理もした。でも、次々に仕事がやってきて・・・」


「自分が埋もれてしまうようなところには行かない!」

女性SE第一号、初めての女性社員。高橋さんはどこでもいつも「特異な存在」だった。しかし、「自立心がある」「群れない」という東京女子大学の伝統(高橋さん曰く)からか、たった一人ユニークな存在としていることが心地よかった。取引先の男性社長たちは、女性社長である高橋さんにだけは、他には言えない愚痴や本音を語ってくれた。その話を親身になって聞くことが、次の仕事につながることもあった。古くからの付き合いを大切にし、コンピュータというデジタルな世界に身をおきながら、毎年300通以上の年賀状を欠かさず出しているという高橋さん。30代が終わろうとしている頃に、大学時代に立ち上げたマイコン・サークル(長年続いた伝説のパソコン・サークル「MOVE」)でお世話になった方から、「経済学部の統計経済でExcel使いたいのに、パソコンを教える先生がいないそうだ。やらないか?」と、大学の非常勤講師の話が舞い込んできた。それが現在、教授として勤務している國學院大學だった。それを機に早稲田大学や流通経済大学など他大学からも講師依頼が来るようになる。そして、2006年、國學院大學から専任教授のオファーが来た。


「仕事って、いつでも好きなことができるわけじゃない。でも、これで結果を出せば次にきっと何かやってくる。と思うことにした。」

好きなことがしたいと転職して10年以上経ったとき、高橋さんは「仕事では好き嫌いの感情は捨てる」という極意を身に着けていた。苦手な仕事相手とも苦手と思わずにやっていくうちに、高橋さんは様々な経験と多くの人脈を獲得していた。そして、経済の状況、自らの状況が変わるときに、それらがチャンスを運んできた。


「本当のプロはプロを尊敬する。」

現在所属する國學院大學は文系中心の大学。経済学部では、それぞれの先生が独自の研究分野を持っているので、お互いに無意味な干渉はせず尊敬し合っているという。もし理系の学部だったら、限られた分野を極めるしかないが、コンピュータに関係することであれば、どんな分野にも手を広げられるという自由さが今は心地よいという。


「異質である方が得だと思う。そこでは私にしかそれはできない、というものを作ること。私はコンピュータは外さないと決めている。」

高橋さんがコンピュータに興味を抱いたのは中学時代。隣に住むお姉さんが数理学科を出て銀行の電算室に勤めたのを「かっこいい!」と感じた。より多くの人々にコンピュータを知ってもらい、使ってもらいたい。そのためには、わかりやすく説明する技術も必要だからマニュアル作成の仕事もした。現在は研究者ではあるが、毎日ゴリゴリと研究しているわけではなく、これまでやってきたことをまとめたり、教え方を研究しているうちに自然と研究成果として残せるようになっていた。


「大学卒業時に研究者にならないか、と言われたが、研究者はお金が儲からないからと断った。(笑)とりあえず働いてからでいいや、と。」

コンピュータを軸にプロとして多くの仕事をこなしてきた高橋さん、今はまぎれもない研究者である。