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Vol.5 石井志保子さん



1973年 文理学部 数理学科卒業
東京大学大学院数理科学研究科教授

数学者を志す

現象の奥底にある真実をつかみたい、と幼い頃から数学者を目指していた石井先生。「特殊相対性理論の専門書を読み、自分もこんなすごい発見をしたいと思った。」と語る。

東京女子大学数理学科に入学後、勉学に励む一方で、ダンスサークルに所属し、競技ダンスに熱中。大会では好成績を収めたこともあった。

また、勉学の方面では、代数幾何学に興味を持ち、わからないことは先生の部屋を訪ね、質問を繰り返した。当時の様子について、次のように語る。


『いつ訪ねて行っても、温かくニコニコと丁寧に教えていただき、そんな環境がとてもありがたかった。』

良い環境、良い友人に恵まれ、充実した4年間を過ごす。


Later is better than nothing

学生生活は充実していた。しかしその後、石井先生に苦難が待ち受ける。学位取得後、研究者のポジションを獲得するために就職活動をするが、どこに応募しても不採用。研究面においては、国際研究集会での発表、論文を出版するなど充実し、着々と実績を積み上げているにもかかわらず、一向に明るい兆しは見えない。

『こんなにやってもだめなら何をやればいいのか、と絶望した。』

と語る。また、その頃、石井先生は、子育ての真っ最中。夫も仕事で忙しく、実家も遠方のため、すべて一人でやらなければいけない。

研究の時間がなかなか取れず、時間がない!と焦る日々。そんな中、


『Later is better than nothing』

遅くなってもやめてしまうよりはいい、と焦る自分の心に言い聞かせたという。また、辛い中でも一番の精神的な支えは夫。『君なら出来る、もう少し続けてみてはどうか』など、言葉で励ましてくれた。

困難の中でも、石井先生の数学に対する情熱、数学者になりたいという強い希望が薄れることはなく、夢を叶えることが出来た。


女性として輝き続けるためのライフバランス

現在、研究以外にも講義、会議、審査役など多忙な日々を送る石井先生。家庭生活と仕事を両立させるには優先順位を付けることが大切とのこと。
気分転換の方法は、水泳。凝り固まっていたものが開放されるようで、今まで思いつかなかったことを、はっと思いついたりすることも。
また、猿橋賞受賞(1995年)以降、女性研究者のロールモデルとして、社会的な役目を意識するようになったという。
子育て真っ最中の研究者の女性から、研究が思い通りに出来ない、先が見えないと悩み相談を受けることがある。

「学位も取得し、好きな人と結婚し、子どもも生まれて、女性としてとても輝いている。今の状態はすばらしいことなんだよ、と言ってあげたい。」


後輩へのアドバイス

女性が数学を学ぶことに対して、石井先生は次のように語る。


「女子は理数系に進む力を十分に持っている。理数系は女子には向かないという固定観念に囚われず、興味がある気持ちを大事にして進んでいって欲しい。」

また、研究者のみならず、働く女性を目指す後輩たちへのアドバイスは、次の通り。

「子どもも家庭も欲しい、研究もしたい、このような要求は女性としては真っ当なこと。でも、欲張るならどこかで無理をしなければいけない。」

石井先生は、九州大学の助手として勤務していた頃、週の半分はお子さんを東京に置いて、飛行機で通勤していた。就職できたことはとてもうれしかったが、時間的にも肉体的にもきつかった。でも、数学者になりたいという情熱があったからこそ無理ができた。


「無理をしないでも自分の能力があればすべて手に入れられるとは思わない方がよい。どこかで無理はしなければならない。でもその無理をする時期が永遠に続くわけではない。」


インタビューを終えて

私自身、研究が上手く進まない時に、他の人と自分を比べてしまったり、焦ることがよくあります。石井先生の「Later is better than nothing」という言葉にとても勇気づけられました。研究を続けるという強い意志を持ち、少しずつ前に進みたいなと思います。 大変お忙しい中、インタビューをお引き受けくださり、本当にありがとうございました。