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Vol.8 堀祐子さん


2011年 人間科学研究科博士後期課程修了
東京女子大学非常勤講師

私、本読みたい!

「大学2年生の時に卒業後の進路について真剣に考えた結果、やっぱり私、本読みたい!と思った。」

イギリスの現代演劇における女性表象が専門の堀先生に、なぜ研究者への道を選んだのかを聞いてみた。大学2年生の時、これから自分にはどのような道があるのだろうと考え始めた。本を読むことが好き、人と関わることが好きという二つを念頭に置いて考えた結果、出版社に就職するか、このまま大学院に進むかの二択になったという。指導教授に相談し、自分でよく考えた結果、やはり本を読みたいという強い気持ちがあったそうだ。出版社での仕事は、本を読むことだけが仕事ではない。そのため、自分自身で本を読み、論じていく研究職を選んだ。


「苦しいなぁと思う暇もなかった(笑)」


論文を書いていればスランプも必ず訪れる。その際に、堀先生の指導教授は「とにかく書きなさい」という方針で指導にあたった。 悩んでいても、立ち止まっていても始まらない。一歩でも二歩でもとにかく前に進み続けてきたからこそ、現在の先生があるのだろう。


スタディ・ライフバランス

研究をするものにとって、プライベートとのバランスは非常に難しい。9時-5時で研究をしているわけではないので、家に帰っても研究のことを考えていたり、休日も研究をしていたり、ひどいときには夢にまで出てくる(笑)。
研究とプライベートを堀先生はどのように両立させていたのだろうか。堀先生は大学院生の時、学部時代から付き合っていた男性と週に1回息抜きをすると決め、それ以外の日は自分のするべきことを頑張る、というけじめをつけていたという。しかし博士課程になると、博士論文を抱え、なかなか心の余裕もなくなり苦しんだこともあった。博士課程の4年目から非常勤講師を始め、更に余裕がなくなったのではないかと思ってしまうが、堀先生はこの多忙さをポジティブにとらえてバランスをとっていた。


「教える時間と、自分で研究する時間で、気持ちの切り替えができた。どちらかで煮詰まっても、もう片方で気分転換ができる。」


何か大きなことを抱えた時、それだけに集中したい、他のことは一切やりたくない、と考えるのではなく、どちらもこなしてうまくスイッチを切り替えていた。だらだらと一つのことに時間をかけるのではなく、うまく切り替えをすることで目の前のことに集中することができ、いい相乗効果が生まれたに違いない。多忙さをポジティブにとらえることは、先生の最大の強みの一つだろう。


ワーク・スタディ・ライフバランス

現在、複数の大学で教鞭をとり、研究者のみならず、教育者としての責任も感じながら多忙な毎日を送っている。また、昨年には前述の男性と結婚した。更に、今年の8月には出産を控えており、母親になる。研究者、教育者、妻、とさまざまな役割をこなすことになるにも関わらず、インタビューに応える先生のお顔にはネガティブな影は一切ない。


「(結婚生活は)カップルごとに全然違うだろうし、『普通』なんてものはない。」


結婚式の際、指導教授がスピーチで、「いわゆる一般的な結婚生活というものは、この二人にはできません。」と言い切り、周りの人に理解と協力を求めて下さったことが、とてもありがたかったという。これをきっかけに「私たちなりの”結婚生活”を作ろう」と思えたそうだ。研究者の道に進む際に、さまざまな困難があり、結婚や出産など、女性には考えなければならないことがたくさんある。しかし、先生はそれらを必ずしも困難ととらえず、心から楽しんでおられるようだった。大学2年生の時に感じた、「私、本が読みたい!」という気持ちが今も変わらず、先生に活力を与えているのだろう。
最後に後輩たちへのアドバイスをいただいた。


「その研究対象が本当に好きなのであれば、多少つらいことがあっても、乗り越えられる。自信を持って、周りの方の協力を得ながら、邁進してほしい。」


インタビューを終えて

先生の後輩へのメッセージにもあるように、先生自身も周りの方の協力を得ながら進んで来られたように感じた。理解のある夫、先生に活力を与えてくれる学生たち。しかしそれは先生が努力している姿を見てこそだろう。先生がとにかく好きなことを追及し、努力し続ける姿が、いい意味で周囲を巻き込んで、今の先生をつくりあげたのだろうと感じた。大変なことを、大変そうに、辛そうに語るのではなく、本当にポジティブに楽しそうに語る姿が印象的で、まさしく女性研究者のロールモデルであると感じた。